Temple-3

寺院建築その3

大本山中山寺 大願塔

南面外観

↑画像にカーソルを合わせると夜景になります。

この建物は、かつて中山寺に存在していたとされる大塔(5間ある多宝塔)を再建したものです。

聖徳太子によって建立された紫雲山中山寺は、伝統的な堂塔伽藍によって配置されており、中山寺に
保存されている参詣曼茶羅には、現存しないものが幾つか見られ、その中の1つは大願塔が画かれてい
ました。
この大願塔を再現するにあたり、周囲伽藍と違和感の無い計画としました。

大塔の主体は鉄骨構造ですが、造作部分は伝統的手法を取り入れたハイブリッドな工法により建立され
ました。
地階に位牌室、地上階には70人余を収容する事が可能な祈祷室を設け、安産祈願の中山寺の象徴とし
て優美な姿を現しています。

地階は大部分が既存の石垣内に埋め込まれると共に、外壁は中山寺を再建した豊臣秀頼に因み、太閤
塀をコンクリート打放しで表現し、環境との調和を図っています。

 

大願塔鳥瞰

元来鎮守の杜であった場所に大願塔は建立されました。ここは本堂よりも一段高くなっているため、シンボ
リックな塔を一層引立て、下から見上げると天空に吸込まれる様にそびえ立って見えます。

 

阿弥陀堂から見た地階入口とスロープ 阿弥陀堂より地階入口を見る
地階位牌室へと導く玄関には、唐破風を型取った庇が、
外壁から突出しています。
約3m突出していますが、この形状により剛性を確保し、
実現可能となりました。
隣接する既設阿弥陀堂との関係から、地階入口の床
が高くなっていますが、スロープによりアプローチする
ことで、バリアフリーに対応しています。

 

ガラスモザイク壁画及び天井照明ガラス画:三浦啓子氏

位牌室

位牌室内は四面に位牌棚を設け、その上部3m×16mの壁面に画かれたガラスモザイク壁画と天井照明ガ
ラス画と共に、真言密教の曼茶羅の世界、宇宙観を現した空間を創り出しています。

 

前室・ロビーより位牌室入口を見る ロビー
地階前室・ロビーは、大理石の荒々しい斫り仕上げの
壁面とし、外部から祈りの場へと導く地中空間を強く意
識させています。
ロビー壁面の一部には、復元された本堂の彩色を陶
板に焼付けたものが掲げられています。

 

位牌室入口から室内を望む 位牌室
前室より位牌室への入口は、地中の石に穿たれた穴を
イメージし、背の高い重厚な扉と相まって、内部の厳粛
で幻想的な空間を予感させます。

一見、人間の力では動かない様に見えるこの扉は、パ
ワーアシストにより、容易に開け閉め出来る機構となっ
ています。
位牌室に入ると、正面に阿弥陀如来像が安置されてい
ます。
天井は三浦啓子氏による装飾ガラスに強化合わせガラ
スを組み合わせ、安全性を高めています。

装飾ガラス裏面は、全面LED発光及び調光により、均
質な光を得ています。

 

欄間ステンドグラス:三浦啓子氏

祈祷室

1階祈祷室も地階同様、周囲に位牌棚を設け、正面には大日如来像が安置されています。主体構造が鉄骨
造で芯材を必要としないため、これだけの無柱空間が実現可能となりました。

 

祈祷室天井 祈祷室より入口を見る
折上格天井の梵字は、不燃処理された桧板に、種智院
大学 児玉義隆先生による直筆となっています。
通常小壁となる欄間部分は、三浦啓子氏による特殊な
ステンドグラス「ロクレール」が嵌込まれ、軒下から僅か
に注ぐ光に豊かな表情を与えます。

 

南西面外観

↑画像にカーソルを合わせると夜景になります。

遠目には、大願塔の下部に地下室が存在することを感じさせません。塔下層に見えるガラス・ボックスは、
エレベータで、地下から地上へバリアフリーな移動を可能にしています。
屋根は、桧皮葺のイメージを銅版で表現した芯反りの屋根となっています。
基壇、上層、下層、亀腹、相輪の絶妙な寸法比率により、美しいプロポーションを形成しています。

 

エレベータ夜景

エレベータ地上部分は、塔本体の外観に出来るだけ影響を及ぼさない様に、シースルーのガラス表皮で
構成されています。扉上部の中山寺の紋、及び鉄骨の丸穴は、意匠的なものだけでなく、エレベータシャ
フトの換気機能を備えています。

 

中山寺、大願塔近辺鳥瞰

写真手前に位置するのは、「紫雲閣」。この建物は聖徳太子創建1400年事業として計画され、MIKI事務
所に於いて設計監理が行われました。
いずれも歴史の流れに左右される事なく、永年に渡っての使用を考慮し、周囲との調和、デザイン、使用
材料に至るまで、歳月に耐える様、設計されています。

 

大願塔 設計・監理ノートへ

 

 

中山寺 萬霊塔前参拝所

遥拝所上屋

この建物は、既設萬霊塔の遥拝所です。それまで塔の高い基壇まで登っていた参拝者が安全にお参り
出来る様にすることが求められました。
小さな上屋ですが、高低差のある敷地と塔との関係処理や、導線の変更に伴い参拝対象となる部分に
新たに大日如来の梵字を刻んだ飾り扉を設けるなど、通常の建築と同等の手法が駆使されています。
屋根は敷地の高さに従って優美な曲線を描き、正面の唐破風は極限まで簡素化されながら品位を損な
わないものとし、周囲伽藍との調和を図っています。

 

萬霊塔鳥瞰 大日如来の梵字を刻んだ飾り扉

 

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